9:オシレーターへのモジュレーション・サンプラー
アナログシンセサイザーテクニック②
オシレーターへのモジュレーション
オシレーターの搭載波形から大きく飛躍した音作りを行う定番テクニックに「オシレーターを変調(Modulation)する」があります。
例えばLFOをピッチにかけるとビブラートやサイレン風の音になりますが、これを超高速で行うと違う刺激的な音に変化していきます。
このLFOをオシレーターに替えるとさらに様々な変化に富んだ音色を作り出すことができます。
これは複数のオシレーターを搭載したシンセサイザーでの音色合成方式です。
このオシレーターでのモジュレーションにはいくつかモードが有ります。
モードごとにキャラクターのある音色がありますのでセットで覚えてください。
Oscillator sync
OSC1をOSC2へ強制的にシンクロさせることで位相のズレをなくします。
OSC1のピッチを変化させ、独特の音色を生み出します。
「ギョ~~~」「キャオーーーーン」という音。
リードやベースに用いられます。
FM合成
モジュレーターであるOSC2でキャリアOSC1を変調します。
この時、OSC1とOSC2のピッチ比、変調強度を調整して音色を作り出します。
きらびやかな音色が得意で、アナログ方式では苦手な金属音や複雑な倍音構成の音が得られます。
非常に優れた音色を生み出しますが、狙った音色を探るのが非常に困難です。
きわめて高難易度なシンセ方式となります。
ベースに強いことも特徴です。
Ring Modulation
OSC1とOSC2、それぞれの周波数の和と差を同時出力させます。
ピッチ比によって金属的な音や催眠的にうねる音などが得られます。
FM合成に比べてアナクロな音色が特徴です。
アナログシンセの合成方式では一番の飛び道具的な音となります。
デジタルシンセサイザー①
アナログシンセサイザーの限界点
~デジタルシンセサイザーの出現~
アナログシンセサイザーの電子回路にて作り出されるオシレーターの波形は単純型で、また時系列にての音色変化もそれほど複雑な制御をすることはできません。
シンセサイザーは「どんな音も出る魔法の楽器」とのイメージも強いですが、ことアナログシンセサイザーに関しては自然界の音や倍音変化の多いアコースティック楽器のシミュレーションなどはかなり難しいのです。
特にピアノ、スネアドラム、シンバル、ベル音/鐘などの金属系音色、人の声などはアナログシンセサイザーの不得意とする音色です。
しかしながらデジタル技術の発達により回路制御や音源方式などが漸次進化し「FM音源」「PCM/サンプリング音源」などのデジタルシンセサイザーの出現によりアナログシンセサイザーでは苦手としていた上記の音色群を網羅できるようになってきました。
特に「PCM/サンプリング音源」についてはメモリのコストダウンにより大サンプル容量が実現し、マルチレイヤーサンプリングが可能となり、きわめて自然な響きのアコースティック楽器の再現ができるまでに辿り着きました。
2000年頃からではアナログシンセサイザーの電子回路構造や比較的単純な楽器の物理特性を純粋数学で記述した音源方式「物理モデル音源(モデリング音源)」も加わっています。
各音源合成方式において何が得意で何が苦手なのかを把握することが望むサウンドを手に入れる近道となります。
サンプラー
自然界の音、もしくはアコースティック楽器そのものの音を録音し、それを音色の素材とした楽器を「サンプラー」と呼びます。
簡単にいえばサンプラーは「オーディオファイルのプレイバッカー」です。
その原型はデジタル技術が発展する前の1960年代の磁気テープ音源サンプル再生楽器「メロトロン」に見ることができます。
メロトロンは鍵盤一つ一つに磁気テープ再生装置を搭載したかなり力づくな楽器でした。
そのノスタルジックな音色は今でもコアなファンを魅了し続けています。
デジタルサンプリング方式によるサンプラーが登場したのは1978年フェアライトCMIが最初と言われています。
またほぼ同時期にE-muから「Emulator」が発売されサンプリングが徐々に認知されていきますが、一般のミュージシャン・ユーザーに広まるのはおよそ1990年代に入ってからになります。
メロトロン
フェアライトCMI
Emulator
サンプラーはアナログシンセサイザーのオシレーターがオーディオファイルに変わっただけ
2022年現在のDAWに搭載されるサンプラーはさらに進化して強力なシンセサイズ機能を伴ったものが多くなっています。
つまり、オシレーター部分がオーディオファイルに取って代わったものがサンプラーとなっているわけで、基本のシンセサイザー機能を理解していればほぼ問題なく操作することができます。
EXS24の強力なFilterとModulation router
非常に効きの良いFilter,と3LFO、2ADSRの豊富なモジュールへの多彩なルーティンにより、サンプル音源としてシンセ波形を呼び出しES2顔負けの幅広いシンセ音が作れる。
EXS24の設定部分
「Dest」と「Src、Via」のパラメーター
【Tips】リズムマシンの歴史
エレクトロ系の音楽、DTMの発展と密接に関連しているものがリズムマシンです。
サンプラーが発明される以前は電子オルガンに搭載されるようなチープなビートボックスサウンドであくまでもリズムの補佐という使い方でした。
1980年、そこから初めて「まるまる1曲をプログラムできるドラムの代わりになり得る初めてのリズムマシン :TR-808」の登場により一気にエレクトロ系の音楽が市民権を得るに至りました。
その後1981~83にかけてサンプリング技術の登場で生ドラムの音がリズムマシンで出るようになり「ドラマーとはなんぞや」「人の叩くリズムとは?」という問題提起にまで至る大論争が起こりました。
その中で生まれた特徴あるリズムマシンの銘機たちはいまでもスタンダードな音色として使われ続けています。
アナログシンセ音源
Roland CR-78:1977
自分でパターンをプログラムできた最初期のリズムマシン。
それまではプリセットパターンのみだった。
電子オルガン付属のリズムマシーンのようなチープな音。
現在ではそのチープさが逆に受けている。
Roland TR-808:1980
Techno HipHop Funk UKNewWavesなど、多大な音楽シーンに影響を与えた偉大なリズムマシーン。
通称”ヤオヤ”は1曲分の全ドラムパターンをプログラムできた。
音はかろうじて「ドラムの代わりに成り得るぎりぎりの音」
EQやコンプでフルブーストして時代を生き抜いている。
Roland TR-606 & TB-303:1982
“ヤオヤ”は15万円と高かったので、コンシューマーユースへのエントリーモデルとしてTR-606が発売された。
同時にベースライン特化型シーケンスシンセTB-303もセットで売られていたが、当時はPCMサンプリングへの強いあこがれから「安物チープの貧乏機材」というとても悲惨なイメージがついて回り(音も確かに安っちぃ、けど今はカッコイイ)あまり売れなかったが、1990年台のアシッド・ハウス&テクノの衝撃的インパクトによりTB-303が一躍華形ヴィンテージシンセとしてスターダムにのし上がる。しかしTR-606はそれにくっついていけなかった(評価されたのはヤオヤと909)
デジタル(PCM)音源
LINN LM-1
TR-909
ダイナミクス系エフェクト①
主に音量を調整するエフェクターです。
最もよく使われるのがコンプレッサー。
ダイナミクス系はその効果がはっきりとはわからず、またその使い方や実践技法の情報がなかなか手に入りづらく用法の難易度が高いものになっています。
現状のミキシングではより効果的に各パートの存在感を高めるために、またバランス良くミックスをするためにパートごとに適度にコンプレッションを掛けるのが通例となっています。
EQと合わせてダイナミクス系のエフェクトを自在に操ることがプロフェッショナルサウンドへの近道になります。
Compressor
ハイハット一個の音からミックス時までほぼすべての音で使用するエフェクター。
音を「まとめる」「タイトにする」「目立たせる」「なじませる」「エッジを効かせる」「ソフトにする」など多種多様な使用法があります。
「音量変化」だけでなく「音質変化」のためにも使い、ヴィンテージ回路エミュレーションでの「サウンドキャクター変化」を再現することも可能です。