3:キーボードの種類・ジャンル別アンサンブル
キーボード
「キーボード」という名称を使った場合、ギターのときとは違い「アコースティック」楽器を指し示すことはまずありません。
「エレクトリック楽器」と「シンセサイザー・サンプラー」に大別されます。
エレクトリック楽器
エレクトリック・ピアノ、クラビネット、ハモンドオルガンを指し示します。
元のアコースティック楽器、アコースティックピアノ、クラビネット(チェンバロの亜流)、パイプオルガンを可搬性に優れた電気楽器へと改良したものを指し示します。
エレクトリック・ピアノ
グランドピアノにピックアップを取り付けて電気楽器化した「エレクトリックグランド」と、ピアノ弦の代わりに金属板を用いてポータブル化し、電気楽器化した「エレクトリック・ピアノ」に分かれます。
Rhodes(ローズ)社が有名で「エレピ」と言った場合はほぼ金属板仕様のものを指します。
また、1980年代後半からYAMAHAのFMシンセ「DX-7」のプリセット音「FM-Piano」が大流行し、エレピサウンドの一派を担っています。
こちらは「FMピアノ」という名前で流布しています。
クラビネット
チェンバロに似たクラビネットを電気楽器化したもの。
ホーナー社のD6が特に有名。
ギターに近いサウンドで、パーカッシブなコード奏法が特徴です。
スティービーワンダーの「迷信」で用いられて世界的に有名になりました。
ハモンドオルガン
トーンホイール方式による音源波形を生成して用いられるオルガン。
機構的には電気楽器に近いが、電気的に風力を得て鳴らすパイプオルガンと区別するために不完全ながら「電子オルガン」とカテゴライズされています。
1970年代、ディープ・パープルやキース・エマーソンといったハードロックやプログレッシブ・ロックに用いられ始め、ギターサウンドに負けないキャラクターでミュージシャンに認知されていきました。
また、ジャズやゴスペルなどにもよく使われています。
ハモンド社のB3が特に有名です。
必ずと言っていいほど回転するスピーカーである「レスリースピーカー」と組み合わせて用いられ、ドップラー効果によるコーラル・トレモロサウンドは圧倒的な存在感を示します。
シンセサイザー・サンプラー
完全な電子回路で発音機構を持つものです。
「音声合成機」の名前が示すとおり、ありとあらゆる音を紡ぎ出すことができます。
2021年現在の音楽においては無くてはならないものとなっています。
DAW上で操作する音源は全てこのシンセサイザー・サンプラーだと言えます。
アナログシンセサイザー
アナログ回路により波形を生成します。
単純波形のみしか生成できませんが、「シンセサウンド」というイメージの殆どはアナログシンセサイザーによるものです。
デジタルシンセサイザー
アナログシンセサイザーでは作り出すことができない波形を、デジタル技術により生成します。
生成後の音加工はアナログシンセサイザーとあまり変わりはありません。
サンプラー
デジタルシンセサイザーにカテゴライズされる場合もあります。
事前録音されたオーディオファイルを鍵盤上で発音するプレイバッカーが基本構造です。
物理モデルシンセサイザー
本来、電子回路にて作られるシンセサイザーサウンドを、純粋数学によりプログラム上でモデリングして発音します。
現実世界を撮影する技術と対比した3DCGをイメージすればわかりやすいと思います。
LogicProにて搭載されている音源はサンプラーであるEXS24以外の全てが物理モデル音源になります。
ジャンル別アンサンブルの特徴
音楽は非常に多くのジャンルに細分化されています。
あまりにも広大なジャンルがあるので一つ一つのジャンルの詳細説明を追うのではなく「アコースティック楽器」「エレクトリック楽器」「シンセサイザー・サンプラー」がどの配分で用いられるかでジャンルの分類をイメージすると、音楽制作に応用がききやすくなります。
アンプラグド
アコースティック楽器全般をこうよびます。
イージーリスニング、ジャズやビックバンド、フォーク・ロックなどの音楽で多く使われています。
エレクトリック楽器
一般的なバンドアンサンブル全般がこれに当たります。
主にマイクで拾った音をアンプを使って増幅してスピーカーから出る音をサウンドに使います。
ポップス・ロック全般に当たりますが、キーボードとしてシンセサイザーサウンドが混ぜられることも一般化しています。
シンセサイザー・サンプラー
エレクトロニック・テクノ・ミュージック全般は、ほぼシンセサイザー・サンプラーにてサウンドが作られます。
特徴的なのはリズム隊に生ドラムを使わず、シンセサウンドで作られたリズムマシンを主体とするところにあります。
一般的なサウンドアンサンブルのコツとして「アンプラグド・エレクトリック系とシンセサイザーを安易に組み合わせない」ことが挙げられます。
もちろん、異種サウンドの融合で独特の世界観を出すジャンルやアーティストが存在しますが、定番の組み合わせではありません。
サウンドとしてはアンプラグド・エレクトリック系とシンセサイザーのどちらかを主体として組み上げたほうがまとまりが出やすくなります。