ユーロビートの崩壊、デトロイトテクノとローファイの歴史 | 特定非営利活動法人ミュージックプランツ | 音楽制作・作曲・DTMを支援する会 Skip to content
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2021年3月 27日

5:1987年~2000年・ローファイサウンド


ユーロビートの崩壊から混沌の世界へ

それまで、金太郎飴のごとく同じサウンドパッケージで彩られたユーロビートは、1988に完全に飽きられます。
一部の熱狂的ファンがスーパーユーロビート・ハイエナジーへとジャンルを進化させるも表舞台に戻ることはありませんでした。

この後、ユーロビート爆発後の混沌の中から舞台はヨーロッパからアメリカへ移ります。
特にシカゴ・ハウスにそのオリジナルを見られるデリック・メイ、ホワン・アトキンソンを中心としたデトロイト・テクノは、それまでの完全デジタルのサウンドに、忘れ去られていたTR-909、TB-303、MC-202などのアナログライクで個性的なジャンク機材を融合させ、全く違うアプローチからのテクノサウンドを完成させます。
現在における「テクノミュージック」の源流は、このデトロイト・テクノとすることが一般的認識です。
一方、1970年代のジャーマンプログレから、KRAFTWERKを中心にした元祖テクノは、主にテクノポップとして区別されています。

ヨーロッパではシカゴ・ハウスからの流れを汲んだアシッドハウスが、イギリスを中心にレイヴイベント(セカンド・サマー・オブ・ラブ)ともに大流行します。
レイヴからの流れはドイツでトランスを生み、オランダでダッチトランス、インドでゴアトランス→サイケデリックトランスと変化し、攻撃的サウンドベクトルはロッテルダムテクノ(ガバ)などのハードコアを生み出すなど、それまでのユーロビートの画一的なサウンドの鬱憤を晴らすかのごとくジャンルの微細化と嗜好の多様化を生み出します。

アメリカでは、音楽の主役が黒人になり、シカゴ・ハウスから流れる王道ハウスミュージックはR&B要素と結びつき、ジャネット・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストンなどの大御所サウンドのメインフレームになっていきます。

日本では、この頃からYMOに影響を受けた次世代の音楽家が、独自のサウンドを追求し始めます。
それまで、完全に欧米音楽の後塵を眺めていただけの日本の音楽も、やっとこの頃自立思考が芽生えてきます。
特に電気グルーヴ、テイ・トウワ、ケン・イシイなどのテクノラインとピチカートファイブなどの渋谷系と呼ばれたハウス、ヒップホップラインがチャートにも食い込み始めてきます。

1990年代は、シンセサイザーサウンドにおいては最も応用的テクニックが磨かれた時代と言っていいでしょう。
特に、サンプラーが一般化し、過去のアナログサウンドの復活と、デジタルサウンドとの融合。
エフェクトテクニックとシンセサイザーとの組み合わせでの可能性の模索など、一概に時代を象徴するサウンドと言うものを指し示すのは極めて困難です。
ただ、この時期アシッドハウスからアシッドジャズ、R&Bとの邂逅、ヒップホップの席捲など黒人が主役となっていたことで、サウンド的な面だけでなく、アッパーなテンションコードサウンドも好んで用いられ、サウンドアンサンブル的にも音楽理論的にも、極めて高い次元の音楽が時代の中心にあり続けていた事実は極めて重要です。

1980後半〜1990初頭の簡略音楽関連図

1980後半〜1990初頭の簡略音楽関連図

ローファイサウンドの時代

時代的にやっとCDレベルのサンプリングが出来るようになり、AKAIのS1000シリーズが全世界でサンプラーの標準機となりつつあると、前時代のロービットサンプルサウンドの味の深さ、サウンドの骨太さが最注目されます。
特にR&B、ハウスの領域では、ユーロビートの完全デジタルなキラキラサウンドを完全逆行するようにザラザラしたベースパンチの効いたサウンドが求められました。
ただサンプリングするだけで骨太ローファイサウンドが得られる、プレミアムサンプラーとしてE-muの「SP-1200」が有名です。
また、TB-303はアシッドサウンドの要役として絶対的存在となり、特にディストーションとの合せ技サウンドは、定番サウンドとして根付くこととなります。

デジタルシンセサイザーの発展

1990年代初頭から、アンサンブルが組めるマルチティンバー音源、マルチトラックシーケンサーを搭載し、一台でおおむねのサウンドを完結できる「Music Workstation」と銘打った機種が登場します。
この代表格がKORG M1です。
限られたサンプル容量のために、余韻を切り捨てた硬質感のあるサンプルサウンドは今でも使われています。
また、サウンドのアタック部分だけにサンプリングを用いて、持続音はアナログ音源のハイブリッド方式「LA音源」を開発したRoland D-50などは、その後のテキスチャ、モーションシンセサウンドの試金石となります。

デジタルシンセサイザーの発展


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