4:1986年〜1989年・FM音源とユーロビート
FM音源からフルデジタルの時代へ
YAMAHA DX7
オペレータを6つ搭載。オペレーターの接続構造をアルゴリズムといい、32のアルゴリズムから選べた。世界屈指の難解シンセサイザーだったが、音色カートリッジROMの販売があって世界的に大ヒットした。
オシレーターの周波数変調を応用した音声合成方式。
キャリアとモジュレーターと呼ばれる2つのオシレーター(オペレーターと呼ばれた)同士を「掛け算」することで、アナログシンセサイザーにはない、複雑な倍音成分をもつ音色の生成を可能としました。
アナログシンセサイザー回路に比べ、演算資源が少なく、チップ化が容易で多音ポリフォニック、大容量音色ストックも行えます。
しかし、その複雑な倍音の挙動は予測が難しく、とても素人が一から音色を作り上げることはできませんでした。
そこで、音色ストックをカートリッジ化し専門家が作った「プリセット音色」を販売することが始まり「シンセサイザーをいじり音色を自ら作る」楽しみは薄れていってしまいました。
金属的で硬質感のあるサウンドが得意で「FMエレクトリック・ピアノ」「FMベース」「FMベル」「FMブラス」などの、FM音源ならではの魅力ある定番サウンドは現在でも活躍しています。
一方、アコースティックピアノやリアルドラム、ストリングスなどの再現は苦手で、これらのサウンドはサンプラーが担うことが一般的となりました。
LogicPro搭載のFM音源シンセサイザー
共に2オペレーターだが、サウンドのバリエーションは十二分にある。
こうしてサンプラー系とFM系のサウンドの住み分けが出来上がり、1980年中盤から後半にかけてはデジタルサウンド一色の時代に入っていきます。
アナログシンセサイザーの衰退だけでなく、時代の求めるサウンドが完全にデジタルにシフトしていきます。
これはエフェクターやレコーディング機器にも波及し、この当時はMTRやミキサーなどのアナログ機器も過去の遺物というイメージになり「デジタルならばなんでもできる」というような風潮でした。
EURO BEAT の時代 1980年代後半
~偉大なるマンネリズムとポピュリズム~
サンプラー、DX-7によるFM音源が定着すると、いわゆる「シンセサイザー音」の衝撃的なものは全くなくなり、シンセ全般はデジタルビートによる新しいダンスミュージックとしてのツールに一般浸透していきました。
その中でイタリア・イギリスを中心としたヨーロッパダンスミュージックは雨後の筍のごとく同形式の音楽がディスコシーンを中心に流布します。
そしてそれらが「ユーロ」の原型「EURO BEAT」となり、バブル華やかし時代の幕開けとともに全世界を席巻していきました。
Bananarama – Venus (1986)
日本でもカバーヒットした(長山洋子←現在は演歌歌手!当時はアイドル路線でした)。
これ以降日本の歌謡曲で洋楽カバーが流行する黒歴史時代が幕開ける。
まだ、EURO BEATといわれる寸前の曲でF.G.T.HやDead or Aliveとの共通項目が見受けられるも、ギターのロカビリー的リフなどまだサウンドの定式化が完了しておらず、今聴くとオリジナリティある名曲である。
Michael Fortunati – Give Me Up (1986)
マンネリズムの元凶がこの人。
このすぐ次に出した「Into the
night」はあまりにもサウンド、盛り上がり、メロが似ていたのだが「これが僕の個性!」と、自分パクリ疑惑を逆転の発想であっさりと認めかわしてしまい、以後の音楽形式に「あ、これでいいんだね♪」と大手を振って「パクリ時代」を生き抜ける指針を表した楽曲。
しかし、それでもこの曲は非常に良く出来ていて名曲である。
Kylie Minogue – I Should Be So Lucky (1987)
マドンナにまさるとも劣らない妖怪歌姫。
今でもバリバリの現役で、むしろ進化し続けている。
EURO BEATの定式化が完了したのがこの曲と言っても過言ではない。
後のトミー・フェブラリー(the brilliant greenのボーカリスト)。
HITOMIの「Lucky Girl」などその影響が見える。
Paul Lekakis – Boom Boom (1987)
後の「Super EURO BEAT」シリーズの布石となる作品。
男性マイナートニックEUROの定式がこれ。
Bananarama – I Heard A Rumour (1988)
はっきりと「Michel FortunatiのGive me upを意識して作った」と公言している。
パクリという名のレスペクト作品の元祖(!?) キラキラ系ディスコソングの打ち止め曲でもある。
以後はハイエナジー系 R&Bテイスト そしてHOUSEミュージックとTECHNO復活など、ジャンル乱立の時代へと突入していく。