テクノポップの登場そして派生と影響、リズムマシンの歴史 | 特定非営利活動法人ミュージックプランツ | 音楽制作・作曲・DTMを支援する会 Skip to content
エレクトロニックミュージックの歴史 一覧に戻る
2021年3月 27日

2:1978年~1983年・リズムマシン


~1978-1980前半~
1978年テクノポップ元年

シンセサイザーの歴史において1978年は非常に重要な年です。
現在のエレクトロニック・ミュージック原型の一つである「テクノポップ」が完成された年と言われます。
それまでのシンセ音楽は、ビートの概念が薄く「乗れない・踊れない」一部のマニア向けのものでした。
しかし、当時のディスコシーンを意識した「強いビート・踊れるビート」をシンセサイザーサウンドに取り込んだことで、一般にも広がるきっかけとなりました。

Yellow Magic Orchestra/Yellow Magic Orchestra(YMO)
YMOデビューアルバム。
マーティン・デニーの「ファイアークラッカー」は、KRAFTWERKを意識したシンセサイザーサウンドとディスコアレンジでカヴァーした。
細野晴臣は当初バンドリーダーでプロデューサー名義だった。
コード使いやアレンジなど、テクノポップというよりかはフュージョン要素が強い。
シンセサイザーサウンドもエフェクト処理が薄く、シンセサイザーそのままの音が使れていることが多い。
高橋ユキヒロの淡々とした8Beat人力ドラムが印象的。
まだ、サンプリング技術が確立されていなかった当時、ドラムサウンドをシンセサイザーで表現することがどうしてもチープになり、このように人力でバックの自動演奏に合わせて叩かざるを得なかった。

The Man Machine(人間解体)/KRAFTWERK
テクノミュージックの金字塔となるアルバム。
前作「Trans Europa Express」では、珍しく生ドラム音を用いていたが、今アルバムからはボーカル以外には一切の生音を使わず、全シンセサイザーサウンドを用いることとなる。
1曲目「The Robots」はボコーダーメロディの元祖曲であり、フィルタースイープのコードリフ、ランダムなレゾナンスフィルターが効いた16分ベースなど、当時のディスコサウンドに通じる「テクノポップ」サウンドを決定的なものにした。

EQUINOXE(軌跡)/ジャン・ミッシェル・ジャール
ジャン・ミッシェル・ジャールは、自国フランスでは超著名な音楽家。
KRAFTWERKと同じく、早くから全シンセサイザーサウンドを達成していた数少ないシンセサイザー奏者として知られている。
リズム隊にはコンボオルガンなどに搭載されていたようなチープなリズムマシンを中心に組み立てられている。
シンセストリングスと細かいパッセージのディレイSQ音が特徴。
EMSのSynthi Aを用いたFX音は、後にシンセのカテゴリー音「Sci-Fi」音と呼ばれ一般化するに至る。

Midnight Express(サウンドトラック)/ジョルジオ・モロダー
1曲目「Chase」
「ディスコ・ユーロビートの父」ジョルジオ・モロダー。
フランジャーのかかったシンセストリングスパッド、16分ディレイ音のフィルタースイープがかかったベース。
ディスコビートの淡々としたドラム。
後のユーロビート原型の要素が散りばめられている。

リズムマシンの歴史

1970年代末からの、こうしたシンセサイザー・ミュージックの一般への浸透には「ビート」との関連要素が強くありました。
特に、リズムマシンの開発とともにあったと言っても過言ではありません。
当時のリズムマシンの音色は今でも継承されているものが多くあります。
特徴的なリズムマシンサウンドを機種別に知っておくことはエレクトロニック・ミュージックの理解にとても重要です。

アナログシンセ音源のリズムマシン

Roland CR-78:1977
自分でパターンをプログラムできた最初期のリズムマシン。
それまではプリセットパターンのみだった。
音は電子オルガン付属リズムマシンのようなチープ音。
現在ではそのチープさが逆に受けている。

Roland CR-78

Roland TR-808:1980
Techno HipHop Funk UKNewWaves など、多大な音楽シーンに影響を与えた偉大なリズムマシン、通称”ヤオヤ” 1曲分の全ドラムパターンをプログラムできた。
音はかろうじて「ドラムの代わりに成り得るぎりぎりの音」EQやコンプでフルブーストして時代を生き抜いている。

Roland TR-808

Roland TR-606 & TB-303:1982
”ヤオヤ”は15万円と高かったので、コンシューマーユースへのエントリーモデルとしてTR-606が発売された。
同時にベースライン特化型シーケンスシンセTB-303もセットで売られていたが、当時はPCMサンプリングへの強いあこがれから「安物チープの貧乏機材」というとても悲惨なイメージがついて回り(音も確かに安っぽい、けど今はカッコイイ)あまり売れなかったが、1990年代のアシッドハウス&テクノの衝撃的インパクトによりTB-303が一躍華形ヴィンテージシンセとしてスターダムにのし上がる。
しかしTR-606はそれにはくっついていけなかった(評価されたのはヤオヤと909)

Roland TR-606
Roland TB-303

PCMサンプリング音源のリズムマシン

生音を取り込めるサンプリング技術は1970年代後期に開発され、実用的な「楽器」として1980年「フェアライトCMI」1981年「Emulator I」が発売され始めました。
しかし、あまりにも超高価だったため、極一部のミュージシャンしか所有できないものでした。
当時はまだメモリーが高価で希少だったため、長い秒数のサンプリングには限界がありました。
また技術的に低ビットレートだったので、繊細なサウンドのサンプリングにもまだまだ不向きでした。
そこで、サンプリング秒数が短くすみ、低ビットレートでもあまり問題にならないドラムサウンドのリズムマシンへの応用が進みました。

LINN LM-1:1980
世界初のオールサンプリング音源のリズムマシン。
初めて、人間のドラマーと「対等」になり得た機種である。
生ドラムの音がリズムマシン化したことは、当時のドラマーの職を奪いかねないと大きな話題になった。
(ある意味では確かにその通りになった)出た当初は、人が叩けないパターンばっかりの奇天烈さを試みる曲も多かったが、LM-1がドラマーの立派な代替者となり得ることが広まると、ユーロ・イギリスニューウェーブ系のバンド、ミュージシャンなどはメンバーにドラマーがいながらもレコーディングはLM-1で行うことなどが多かった。
8bit28kHzサンプリングながら、そのロービットゆえの図太いサウンドは大きな支持を得た。

LINN LM-1

Roland TR-909:1983
世界で最も偉大だと言われるリズムマシン。
しかしその誕生時は悲惨なものだった。
世界的にサンプリング音源のドラムマシンが登場し始めた1983年にRolandから満を持して登場したTR-808の後継機。
しかしながら音源はハットやシンバルなどの金物系だけがデジタルサンプリングで、その他のバスドラ・スネア・タム・クラップなどはすべてアナログシンセ音源だった。
当時、サウンドのデジタル化への圧倒的なトレンドの中で「今更アナログ音源?しかも重要なバスドラとスネアに?」といった、完全な時代錯誤な設計はミュージシャンを始め、誰も見向きしないジャンク品同然となった。
しばらくその存在自体が完全に忘れ去られてたが、1980年代末期、そのジャンク品特有なサウンドを再活用したデトロイトテクノやシカゴハウスなどが流行すると、一気に超希少ビンテージマシンとして世界中のクリエターからTB-303と共に注目を集めることになる。
現在でも、909サウンドはテクノの定番サウンドとして、またエフェクト処理の工夫で流行のサウンドとして、確固たる地位を保ち続けている。

Roland TR-909

Techno Pop の衰退からUK-ElectroPop NewWave NewRomanticへ
~1980後半-1983~

1980年をすぎると、シンセサイザーにも「デジタル」の大きな変革の波が押し寄せます。
最初のデジタル化は「パラメーター制御」でした。
基本の音源部分はアナログ方式ながら、そのチップ化とデジタル制御はシンセサイザーの低コスト化へつながり、ポリフォニック化、音色メモリー化を容易なものにしました。
「扱いにくく、1音しか出なくて高い」シンセサイザーが「メンテが楽で和音が弾けて音色もメモリーできて少し安い」ものへと変わったことで、限られた極一部のミュージシャンのみのものから、一般的なミュージシャン、バンドへと浸透していきました。
この流れは辺境ジャンルだった「TechnoPop」をより親しみやすく、身近なポップス「UK-ElectroPop」「NewWave」「NewRomantic」という、イギリスを中心とした音楽ムーブメントへと移行し、後の「EuroBeat」への礎を築くこととなっていきました。
一方、瞬間的に脚光を浴びた形になった「TechnoPop」は「ダサい遺物」の音楽として忘れられ始め、表舞台から完全に抹殺されることになりました。
これ以降「テクノ」という言葉は、1988年後半のデトロイト・テクノの登場まで完全に死語となります。

シンセサイザーテクニックとして特に目を見張る「音」はあまり存在しませんが、シンセサイザーのバンドアンサンブルとしての使われ方、「POP」なサウンド味付けのシンセ音として学ぶべき使用法が多く存在します。

The Human League – Don’t You Want Me (1981)
・イントロ 16Beat単音サウンド
・Drum=LM-1
俗にいう「エレポップ」の元祖。
全てはこの曲から1980年代のエレクトロサウンドは始まった。
サンプリングリズムマシンLinnDrum LM-1と他全パートがシンセという当時にしてはかなり画期的だったサウンドでありながら、あくまでも「歌ものポップス」の範疇でまとめあげたのが大ヒットの要因だった。
ピコピコ16ビートポップスの黎明期。

Duran Duran – Rio (1982)
・全編 Seqサウンド(理論的にも参考されたし)
・間奏後の平メロバックのPad音
カルチャークラブと双璧をなしたUKシーンのNewWaveBand。
あくまでも芯は「Rockサウンド」なのだが、バンドアンサンブルにおけるシンセ音のバランスが秀逸だった。
サンプリング(Fairlight)も早い時期に取り込み次のアルバム「Seven and the rugged Tiger」は当時の最先端サウンドと呼ばれた。

Music List vol.2

名前 アーティスト アルバム コメント
ファイアークラッカー YELLOW MAGIC ORCHESTRA イエロー・マジック・
オーケストラ(US版)
1979
ザ・ロボッツ
(Remastered)
クラフトワーク The Man Machine (Remastered) 1978
Equinoxe, Pt. 4 ジャン・ミッシェル・ジャール Equinoxe 1978
Chase
(Soundtrack Version)
ジョルジオ・モロダー Midnight Express 1978
音楽の計画 YELLOW MAGIC ORCHESTRA BGM 1981 TR-808と生ドラムの融合(高橋ユキヒロ)
Easy Lover
(Extended Dance Remix)
Philip Bailey & フィル・コリンズ Chinese Wall (Bonus Track) 1984 TR-808のパーカッション的使い方(ドラム:フィル・コリンズ)
Don’t You Want Me The Human League Dare 1981 LINN LM-1
Rio デュラン・デュラン Rio (Collector’s Edition) 1982
Hang On Now カジャグーグー White Feathers 1982 ドラマーがLINN LM-1に置き換わった例
Vogue MADONNA Celebration (Deluxe Version) 1990 TR-909 ハウスミュージックの原型

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