2:イコライザーエフェクト
イコライザー(EQ)は各パートサウンドからトータルミックスまで、サウンドの音質補正には欠かせないツールです。
EQの操作は各サウンドの特徴にそれぞれ左右されるので「これ!」といった定石はありません。
コツとしては「不必要な部分を削る」作業をメインとすることです。
EQ操作の目的
EQをかける目的は「最良なミックス状態の楽曲」を作り上げるために、各パートの必要な部分を残し、不必要な部分を削る作業に終止します。
この目的達成のためには、可聴域の周波数帯域別による特徴を理解しなければなりません。
特に「リズム隊」「コード隊」「リード」「上モノ」「賑やかし系」などのサウンド種別によるキャラクター変化が、どのように周波数帯域と連携しているのかの知識は「ミックス」への重要なアドバンテージになります。
周波数帯域別の解説
超低域(20~50Hz付近)
音程としてはほとんど認識できない帯域です。
純音(サイン波)でこの辺りを鳴らすと音が聞こえるというより「体が押される」感じ方をします。
また、かなり高性能なスピーカーでないとこの帯域は耳や体が感じるほどには鳴りません。
最近のミックス傾向ではこの帯域をバッサリ「カット」してしまいます。
2006年以降の女性ボーカルテクノポップサウンドなどはもう少し上の60Hzまでカットしています。
低域(50Hz~200Hz付近)
リズム隊のボディの音が集中する帯域です。
ここの処理が一番神経を使います。
ここをしっかりと処理することにより他の音域のヘッドルームを確保することができて、いわゆる「音圧稼ぎ」に劇的な効果が得られます。
様々にEQとコンプを駆使してまとめ上げていきます。
中低域(200Hz~800Hz付近)
コードやメロディ(ベースの第一倍音も含む)など音楽を音符的に構成するそれらの基音が集中します。
中域(800Hz~1.5kHz付近)
帯域名は「中域」ですが、音符、楽譜的にはかなり「高音部」です。
リズム隊と楽曲構成音の倍音が鳴り始めるところで耳が感じる「音圧」に関係し始める帯域です。
この帯域を上げすぎると「クセのある変な音」になるので注意が必要です。
中高域(2kHz~4kHz付近)
耳が一番敏感に感じる帯域です。
音の「輪郭」を形成する重要なポイントです。
また、音の立ち上がりの打撃音などいわゆる「アタック音」でもかなりな範囲を占めるポイントでビート感の「キレ」を演出するうえで処理が重要です。
しかし強調しすぎると多大な不快感を与えます。
高域(5kHz~10kHz付近)
サウンドの「輝き」をつかさどるポイントです。
ギターのフレットノイズ、ボーカルブレス、ストリングスの弦摩擦など、ノイズ成分が耳につきやすいポイントでもあります。
超高域(10kHz~16kHz付近)
サウンドの「空気感」を感じるポイントです。
特に14kHz以上は知覚ギリギリのポイントですが、逆にここが無いと「ハイが落ちている」と感じます。
アナログFM放送は15kHzまでしか鳴っていないためCDと比べると「ハイが落ちている」というのが実感できます。
超々高域(16kHz~20kHz以上)
「モスキート音」と呼ばれる帯域の音です。
加齢により、音を感知する有毛細胞が高域から壊死するため若者しか聞こえない傾向にあるようです。
ポピュラー音楽ではここの帯域も「カット」する傾向があります。
EQのタイプ
パス(カットオフ)タイプ、シェルビングタイプ、パラメトリックタイプ、グラフィックタイプ等の様々な形式があります。
2017年現在のDAWに搭載されるEQは以上のタイプを組み合わせたものが主流となっています。
フィルタータイプ(ハイパス/ローパス)
シンセサイザーのフィルターと同種です。
指定周波数(CutOff=Frequency)以上(ハイパス)か以下(ローパス)の帯域を通過させます。
シェルビングタイプ
Frequency以上または以下の帯域を増減させます。
パラメトリックタイプ
Frequency中心から指定幅(Q値)を増減させます。
LogicProでの汎用型EQ「Channel EQ」
LogicProでもっともよく使うEQ「Channel EQ」は「ハイパス」「ローパス」「ハイシェルビング」「ローシェルビング」「パラメトリック×4」と、8機のEQを搭載した複合モデルです。
各EQを駆使して極めて自由なEQカーブを描くことができます。
EQ実践 リズム隊
サウンドメイクの最も重要なポイントは「リズム隊」をいかに効果的に効率よくミックスするかにかかっているといっても過言ではありません。
リズム隊の中核「Kick」「SD」「Bass」は音のメイン周波数が低域に集中しており、それらをすみ分けさせて音が不必要に競合させないことがポイントになります。
リズム隊のEQイメージ
各パートの平均的中心周波数を基軸にしています。
もちろん、ジャンルや楽器種別により変化する場合がありますので、適時調整させる必要性があります。