1:空間系エフェクト
パート/トラックサウンドは、シンセサイザー・ギター・ドラム・ベース等の「音源」をコアにし、各種様々な効果を与える「エフェクター」を通して作られます。
これらのエフェクターを伴ったサウンドを含めて「音源」と称していることが多くなってきていますが、本来は別のものです。
その一番の違いは「エフェクター単体ではサウンドを生成できない」ことでしょう。
「音源」と「エフェクター」の役割分担を理解することにより、シンセサイザーを始めとした各種音源からオリジナルサウンドを生成することが容易になります。
エフェクターには膨大な種類がありますが、大きくグループで分けると約10種類程度になります。
その中で、最も基礎となるのが「空間系」と呼ばれるエフェクターです。
空間系エフェクト「音場」という考え方
実際に音が鳴るには空気の振動が不可欠です。
即ち、耳と音との間には必ず「空間」が存在します。
音が鳴っている空間環境を「音場」といいます。
DTM上のサウンドメイクにおいては「空間系」と呼ばれるエフェクター群でそれらを再現します。
主に「Delay」と「Reverb」が使われます。
大体のトラックでサウンドをつくり上げる場合は一部のパートを除いて空間系エフェクトが不可欠となっています。
実際には「障害物のある空間」「閉じた空間」「濁った空気」でない場合はほぼ原音通りの音(Dry音)となります。
「音」と「音場」を再現するツール
サウンドとは「音場」で「音」が鳴っているものと言えます。
「音」を発生させるものは「音源」「音場」を再現するものは空間系の「エフェクター」です。
一般的に次のように定義できます。
シンセサイザーとエフェクターについて
ギター・ベース・ドラム等様々な楽器群や人の声などの中でも最も自由度が高く、サウンドの幅が広いものが「シンセサイザー」です。
シンセサイザーとは
音の元となる波形を発生させて質感をコントロールし、時間軸的変化や周期的変化を様々に加えてサウンドを作り上げていくもの。
サウンドの素体部分。
エフェクターとは
空間系に代表されるように音源に対して様々な効果をつけもの。
素体を化粧していくイメージ。
膨大な種類があるがカテゴリー別に考えると理解しやすい。
「サウンド」としてとらえた場合音源以上に影響がある場合が多い。
ダイナミクス系 | 主に音量をコントロールする。 コンプレッサー・リミッターなど。もっとも難易度が高い。 |
EQ・フィルター系 | 周波数ポイントを調整する。 個々のトラックからトータルミックスまで使用頻度は一番高い。 パラメトリック・シェルビング・カットオフ型がある。 フィルターはEQの一種とも言える。 |
歪み系 | 過大入力で音を歪ませる。 アンプの素子、アナログ回路、デジタル方式等で歪み方やカラーが変わる。 |
モジュレーション系 | 通称「うねり系」おもに原音と少しだけ遅らせた音とを混ぜで作り出す。 フェイザー・コーラス・フランジャー |
空間系 | エフェクターの基本。はっきりと分かる時間で遅れてきた音を混ぜることで得られる「エコー効果」を基本とする。 エコーはディレイと同義。 ディレイの集合がリバーブとなる。 空間を作り出すエフェクター。 |
エフェクター 空間系①
「音場」を表現するエフェクターが「空間系」と呼ばれるものです。
その中でもディレイとリバーブがメインで使われます。
特にディレイはエフェクターの超基本となります。
ディレイ
開放されている空間で、妨害物により反射された音との集合。
遠くの山や渓谷などでの「やまびこ・こだま」などがイメージしやすいでしょう。
なおカラオケなどでよく使う「echo=エコー」という言葉は、和訳すると「こだま」すなわちディレイのことです。
ディレイエフェクトは別名「エコー」「タップ」などと呼ばれます。
空間系エフェクトのかけ方について
通常、エフェクターはチャンネルストリップに直列で差しますが、空間系のディレやリバーブは「Send送り」(=センドリターン)でかけることが多いです。
その場合は「OUTPUT MIX」が100%となることに注意してください。
リバーブ
リバーブは「残響」と訳されます。
閉じられた空間での反射音の集合です。
これはディレイの集合とも言えます。
初期反射音・・・ER(アーリーリフレクション)と呼ばれます。
閉塞空間にて極少ない回数で反射して帰ってくる音の集合です。
Pre-Delay・・・初期反射音が返ってくるまでの「間」です。
閉塞空間の規模が大きければ時間も延びます。
リバーブテイル・・・初期反射音後の「乱反射して帰ってくる」音の集合です。
リバーブ効果を得るために、古くはリバーブ用の部屋(エコー・チェンバー)にてレコーディングされてました。
その後、プレートリバーブ(鉄板式のリバーブユニット)やスプリングリバーブが開発されます。
さらにデジタルリバーブが登場し、一気にアマチュアにもその使用が広まっていきます。
デジタルリバーブには主に2つの方式があります。
アルゴリズム方式
初期反射音やリバーブテイルをアルゴリズム演算にてシミュレートする。
IR(インパルスレスポンス)
畳み込み演算方式と言われます。
実際の空間にて残響特性を記録してIRにて埋め込むものです。
理論上これ以上の優秀なリバーブユニットはありません。
欠点は残響特性で得られたリバーブタイムを引き伸ばすことができないことです。
LogicProに搭載されている「Space Designer」はIR方式です。
その他の「SilverVerb」「PlatinumVerb」「EnVerb」はアルゴリズム方式です。
実践では多種多様のリバーブを使い分けて空間をシミュレートします。
エフェクトのセンドリターン
通常はチャンネルストリップに直列でエフェクトをかけますが、空間系や、複数のトラックにまたいで同じエフェクトかけたいときにセンドリターンというテクニックを用います。
センドリターンは「Bus」「Sends」「Auxチャンネルストリップ」を用います。
一台のリバーブで複数トラックのリバーブ深度を個別に設定できるようになります。