ノンダイアトニックコード・コード&スケールと転調について | 特定非営利活動法人ミュージックプランツ | 音楽制作・作曲・DTMを支援する会 Skip to content
音楽理論1 一覧に戻る
2021年5月 29日

12:Major scale世界からの飛躍


前回までにおいて、Major scaleにおけるBasic chord progressionの説明は全て終わりました。
これで基本的なコード進行を自由に組めるスキルを手に入れたことになります。
ここからあとは、メロディやサウンドに影響が大きい「テンションとアボイド」のコントロール、初歩的な転調などのMajorscaleからの離脱を経て、「あらゆるコードワークスと転調・アウトを自在にコントロールできる完全自由な音楽世界」を目指していきます。
第1回の「新標準音楽理論での世界観」で言えば、2次元から3次元へ移ろうとしているところです。
3次元は「立体=面の集合」と認識されます。
すなわち「調性:Keyを司るMajor scale=面」を完全理解することが不可欠となります。

Major scale systemでのChord & scale②

音楽システムの根幹をなすMajor scaleのコード&スケール I~VIIをまとめます。

Ionian (Major scaleのI)

Ionianスケール

対応コードはトライアド「C」のほうが実践ではよく使われる。
「明るい曲のTonic」となり、これはスケールそのものの響きでも表れる。
「sus4コード」「6コード」がバリエーションコードである。

Dorian (Major scaleのII)

Dorianスケール

Dorianの13thは「限りなくテンションに近いアボイド」という特殊な響きの音。
約半数強の人がアボイドに感じるといわれている。
Topノートだとあまりアボイド感がなくテンション音に近いが、内声でm7とぶつかるとアボイド感が強くなる。
バリエーションの「m6コード」は実践でIIm6で使われることは少なくVIm6が多い。
Dorianの響きはトニック感が薄く、アボイド性も低いのでアドリブやサウンドとしても非常に好んで使われる。
一般的に「m7コードで最もかっこいい対応スケール」と言われることが多い。
発展的にm7コードでは全部Dorianを当てはめてもサウンドとしては問題なく、むしろかっこよくなる。
もちろんメロディがある場合はコード&スケールシステムを優先させるべきである。

Phrygian (Major scaleのIII)

Phrygianスケール

アボイドが2つあるのでメロディライティングでは気をつける必要がある。
メロディに♭13を使う場合がよくあり、その時にはバリエーションコードのI/IIIを使う(この時スケールは実質Ionian)できるだけメロディにテンションの11thを絡めると良い。
テクノ系で1コードのサウンドでよくPhrygianが使われる。

Lydian (Major scaleのIV)

Lydianスケール

Major scale 最強テンション「♯11」を持つ。
アボイドが無く、全テンションとなるので非常に使いやすい。
「m7コードにはDorian」と同じく「△7コードにはLydian」と使用して構わない。
サウンド的にもTonic感が薄く、オールマイティに使えるスケールである。

Mixo-Lydian (Major scaleのV)

Mixo-Lydianスケール

Major系唯一のドミナントコード対応のスケール。
実践ではV7ではなくIIm7/V(=sus47/9)のほうがよく使われている。
スケールの響きとしてはm7をブルーノートとして捉えてI – Mixolydianと使われる例も多い。

Aeolian (Major scaleのVI)

Aeolianスケール

マイナートニックの響きが強いのでVIのポジショニング以外では使われない。
♭13はかなり厳しいアボイドなのでメロディ、サウンド共に使用には気をつけること。

Locrian (Major scaleのVII)

Locrianスケール

Major scaleから離脱のきっかけとなるスケール。
唯一の異常インターバル「o5」を持つ。
♭9はアボイドとされているが、状況によってはテンションに聞こえる可能性もある。
スケールそのものとしてはかなりアグレッシブなサウンドになる。
極めて特殊例だが4度堆積の世界では一番の汎用性の高いスケールとなる。

Major scale system

ダイアトニック7thコードのコードクオリティ

【Tips】テンションとアボイドの法則
コードトーン以外のスケール構成音がテンション・アボイドのどちらになるかには法則があります。
左隣りのコードトーンとの関係で、全音ならばテンション、半音ならばアボイドノートです。

左隣りのコードトーンと

全音 全音 テンション
半音 半音 アボイド

ただし、例外が2例あります。

Dorianの13th

ドミナントコードの♭9

【Tips】ドミナントコード
M3-m7のトライトーンを構成音として持つコードを「ドミナントコード」と言います。
Diatonic7thコード上ではVのみに存在します。
M3-m7のトライトーンを持つことから、 P4進行を施す役目を持ちます(→音楽理論①第9回ドミナントモーションの広義)。
5thは何でもよく(P5th +5th o5th)、存在しなくても構いません。

ドミナントコードの構成インターバル

III7とIII7専用スケール

Diatonic dominant motion にて、VIIø7は異常インターバル(o5)を含むためIIIm7ではなく「III7」に進む必要がありました。
これはIIIm7をドミナントコードに強化したものがIII7であるとも言えます。

III7進行

IIIm7対応スケールPhrygianのm3をM3に変化させればIII7で最もよく使われているスケール、Phrygian♯3 (別名:Harmonic minor P5th below)が完成します。

III7のHarmonic minor Perfect 5th belowスケール

III7専用スケール:Harmonic minor P5th below(HmP5b)
III7はMajor scale外の音を含むので「Major scaleからアウトしている」状態です。
この時、Major scaleの防壁外なのでIII7が成立できるならば、自由にスケールを選択して構いません。
実際、HmP5b以外にもAlteredやCom-Dimi、Mixolydian♭6などが使われることがありますが、一般的な楽曲において最もよく使われるのがHmP5bです。
これはMajor scaleからの変化率が最も少なく使いやすいからです。
逆にいえば、HmP5bはIII7以外の位置で使われることはまずありません。
HmP5bはIII7専用スケールです。

III7コードとスケール

HmP5bの特徴

  • M3と11thが共存するのでsus4コードを作ることができる。
  • ♭13thを+5として捉えられる。
    (M3との共存が条件)→+7コード
  • ドミナントコード対応で♭9thがテンションとなる。
    →上部4和音構造=o7

Harmonic minor Perfect 5th belowスケールとコード

ディミニッシュドコード

Diminished 7th chord

o7(dim7) = R + m3 + o5 + o7
主要なコードの間に挟んで使う「経過和音」として知られる。
(Passing chord)

構成音が全て等間隔で並ぶ対称形のコード → どのように転回しても構造が変わらない
→どの構成音をRにしても構造が変わらない(全て同じコード)

転調・アウト:Major scaleからの離脱

サウンドでよく用いられる「転調」にはいくつかの概念と種類があります。
まず転調とは基本「一時的な元のKeyからの離脱」であり元のKeyに戻らなくてはなりません。
違うKeyのまま、もしくはさらに違うKeyへと移り、元のKeyに戻らないものは「移調」と呼びます。
また、元のKeyから離脱はしているが現状どのKeyに属しているのかよくわからないような状態を単に「アウトしている」と表現し、転調と近いニュアンスのサウンドとして捉えられます。
一般的には、十分に調性感が変化し明確に違うKeyへ変化した場合は楽譜上で調号も変化させて書きます。
一時的、もしくは短時間での転調の場合は臨時記号を用いて現在のKeyから離脱していることを示します。

聴感上はっきりと元のKeyから変化した場合を「マクロ転調」、Keyからの離脱感はないが細かく解析すると転調状態とみられるものを「ミクロ転調」と呼び区別することにします。
テクニック的には「ミクロ転調」の技法を身に付ければ「マクロ転調」はいつでも出来るようになります。
しかしながら、最も重要なことは「本当に転調が必要か」という問いかけを常に心がけておくことです。
転調が必要ということは「転調しなければいけないような陳腐なサウンド」になっている可能性が十分にあるのです。
本来転調が必要ということは決して無く、十分に魅力的なメロディとコードが構築されていれば元のKeyから一切離脱させなくてもその魅力は褪せないものです。
「聴感上の切り札=転調」なので、使い過ぎは禁物です。

また、転調技法にも単純なものから高等テクニックを用いた華麗なものまで多種多様にあります。
結論から言うと「どのKeyにも転調できるし、どこからでも戻ってこられる」のです。
この自由な転調を操れるようになるには、関係調を用いた易しい転調からパッシングコード・借用コード・ピボットコードを用いたややテクニカルな転調、そしてReal minor scale systemを用いた華麗な転調まで順を追って学ぶ必要があります。

マクロ転調とミクロ転調

転調① 関係調と借用コード
元のKeyから見て主音(Iの音)が「P4」「P5」「m3」の位置にあるものを関係調といいます。
比較的転調しやすい間柄といえます。
これら関係調のD7Cを元のKey上で使用することでサウンドに広がりを持たせることができます。
また、これをキッカケにしてマクロ転調へと移行することもできます。
調号が一つ増減するものを属調(P5)、下属調(P4)と呼びます。
また同じ主音がマイナートニック音(VIの音)となる関係を同主短調と呼びます。

関係調と調号の関係

関係調のD7C
:CのD7Cとかぶらないものを色付けしています。
これらが借用コードとなります。

関係調のダイアトニック7thコード

借用コードを元のKey上にて配置させた表が次のものになります。

借用コードの図表

これら借用コードはMajor scaleでのBasic chord progressionの要素を応用させることで使用可能になります。
あくまでも「P4進行」「となりの2度進行」「3度下進行」が基本となります。ミクロ転調コード進行集

Tension resolve

テンションからコードトーンへ「解決」(resolve)することをTension resolveといいます。
メロディ構築に極めて重要な要素であり、目指すサウンドの方向性をコントロールする際にも有効な手段になります。
メロディの一般的な「解決」の中にこのTension resolveがあるのでまずは「解決」を解説します。

定義
メロディのアプローチトーンがセンタートーンに上下半音、またはスケール上の全音で移動すること。

ポイント
センタートーン
メロディーを構成する音の中で重要な役割の音。省略出来ない音。
アプローチトーン
単独で存在せずにセンタートーンに移動する必要のある音。脇役の音。
注意
  • アボイドノート、ノンスケールトーンはアプローチトーンでしか存在できない。
  • 全音の動きでノンスケールトーンからは解決できない。

Tension resolveはアプローチトーンがテンションで、センタートーンがコードトーンとなる「解決」の一種です。

Ionianスケールのリゾルブ

  • ①…………スケールのテンションから全音で解決=Tension resolve
  • ②③………半音の位置からはどんな音でも解決となる
  • ④…………全音でスケール外からは解決出来ない

テンションリゾルブ


無料お試し4回オンラインコース募集中

これからDTMを始める方、音楽制作スキルをもっと伸ばしたい方のお試しオンライン講座を開講しています。