失われた“本物の耳”を取り戻す方法【理事長コラム】 New
失われた“本物の耳”を取り戻す方法
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世代間で広がる“耳の性能”のギャップ
音楽を教えていると、世代間にて耳の性能に差があることがわかった。
あくまでも平均だが、バブル世代をラストに、それよりも上の年代は耳の性能が良い。
そして若くなるとどんどん性能が劣化する。
分岐点:音楽のポータブル化がもたらした変化
このバブル世代に何があったかというと音楽のポータブル化だ。
私がまさしくバブル世代だが、この実現については鮮明に覚えている。
音楽を聴き始めた幼少期(1970年代初頭)は、好きな曲を、いつでも聴けるわけじゃなかった。
ステレオ機器はまだまだ高く、レコード自体も庶民には高価な代物だった。
つまり、音楽そのものが贅沢だったのだ。
テレビやラジオでたまたま流れた音楽に、耳をそば立てる。
一度きりかもしれないその瞬間に、全力で聴き取ろうとする。
耳コピという鍛錬が当たり前だった時代
耳コピも簡単なことではなかった。
ループもできないレコードや、巻き戻し自体面倒くさいカセットに、何度も耳を凝らして、ほんの一小節を覚えるのに何十分もかけることもあった。
もちろん低速度再生なんかもできない。
レコードの回転数を落とせばその分音自体も低くなるので意味がなくなる。
そんな風に、楽譜を使わずに音楽を聴き取る行為(耳コピ)は尋常ではない難易度があった。
でも、それが当たり前だったし、その“当たり前”の中で耳を育ててきた。
いや、音楽に興味を持ち、その音楽を自ら奏でようとするだけで、環境の厳しさで自然と耳が鍛えられたのだ。
ウォークマン以後に失われた真剣さ
それが、ウォークマンの登場で状況が一変した。音楽の携帯化はいつでもどこでも楽しめる利便性をもたらした。
だが、そのせいで「いつこの曲が再び聴くことができるか保証されない」危機感がなくなり、「音を最大限聞き漏らさずに聴く」真剣さが失われていったのだ。
今好きな音楽が聞きたくても聞けない状況にて「頭の中で音楽を鳴らして楽しむ」という苦肉の策で心を補完させていた行為を、バブル世代以前の方達には大いに共感してもらえるだろう。だが、その苦肉の策こそが耳の性能を向上させていた訓練そのものなのだ。
耳性能低下の具体的な症状
バブル世代から、特に、2世代後からのポスト団塊ジュニア以降は顕著に耳性能が低い。
これは「音楽を真剣に聞いて楽しむ」から「音楽を聞き流して楽しむ」への移行による弊害と言える。
- リズムに対するGrid/Resolutionが粗い、もしくは認識していない
- 基本的メジャースケール感覚が薄い。ここからトニック感覚もない
- アボイドへの反応が鈍い
- さらにクラッシュにも無感覚になっている
これが、一般人ではなく、音楽を志そうとする方にも共通して言えるのだ。
DTM時代の落とし穴:サウンド偏重と“音符エリア”の欠落
今の時代、DAW/DTMにて、ツールを一通り揃えて基礎的How toを学べば、それほど音楽教育を受けなくてもなんとなく楽曲が制作できてしまう。
それこそ、音楽理論に立脚した音楽システム(音符のエリア)を知らずとも結構なエリアまで到達してしまう。
これはサウンド(音色)偏重が顕著になっていることも付加されているのだが、サウンドへの感度が高い人間はゴロゴロいる。
だが、音符エリアに精通しているクリエータは本当に少ない。
かなりな楽曲を制作するクリエーターであっても、イヤートレーニングを実施するとボロボロの点数となることが全く普通なのだ。
音楽の三要素:リズム/音符/サウンド
- リズム:前提でまず強固に存在している。
リズムが存在しない音は単なる羅列に過ぎず、音楽として成立できない(ポピュラー音楽としてだが) - 音符エリアのシステム
- サウンドエリア
ジャンルによってその成分(重要)比率は異なって存在している。
利便性の発展により、3.サウンドエリアへの感度が上がったと言えるだろう。
しかし、その大きな代償として、1.リズム、2.音符エリアの感度は大きく削がれてしまった。
取り戻す唯一の方法:真剣に聴くことを繰り返す
これを補完するためには、とにかく「音楽を真剣に聴くこと」を初心にかえって繰り返し実行するしかない。この基礎練習の基盤の上で音楽スキルの習得が履修されることが望ましいのだ。
- ながら聴きをやめ、聴く時間を区切って集中する
- 一曲を繰り返し、リズム/メロディ/コードを個別に意識して聴く
- 頭の中で再生する(メロディを口ずさみ、リズムを手で刻む)
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