1:DTM環境構築のためのMacの選び方
(ご案内)ミュージックプランツの会員内では、現在記載の情報に留まらず常に最新の情報を共有しています。
*Appleは2020年11月、新世代型自社製チップ「M1」搭載のMacBook Pro、MacBook Air、Mac miniを発表しました。
従前のIntel Macとの共存期間を2年とし、漸次M1 Macへの移行を推進していますが、こと音楽制作においてはIntel Mac環境からの移行に停滞が見られていました。
この、革命とも言える「M1チップ」搭載Macによる音楽制作環境がほぼ落ち着きを見せ始めた執筆時(2021年9月)にて、安心してM1Macを推奨できる情報が揃いました。
よってM1 Mac購入を強く推奨する方針にてこのDAW/Mac入門を改訂しています。
Music Planzは、音楽制作を望む皆さんに最も効率の良い選定を模索し、情報を提供する基本的姿勢は変わりません。
今後も、DTMを始められる皆さんに高CPにて最適な環境をご紹介できるように最新の情報を収集し反映いたします。
Macの勧め
DTMでの音楽制作にはMacコンピュータの導入を強く勧めます。
Windows環境にて活躍しているプロミュージシャンが相当数いるのは事実ですが、メンテナンス、コストの観点から、最初にDTMを始めるコンピューターにWindowsはお勧めしません。WindowsのDAWソフト機種では、DAW標準付属の音源/プラグインエフェクトのみにてサウンドクオリティを満たせず、サードパーティ製音源/プラグインの追加購入が必須となります。これら追加音源等で、Macと比較してCPU、メモリ等PC性能を増強する必要があり、複数メーカー品の混在が原因での動作不安定が多く、不測のクラッシュを引き起こすことが多々あります。MacメーカーであるApple社製品のDAW「LogicProX」音楽制作環境では、PC/ソフト、オーディオエンジン/ドライバが単一メーカーで統一できるために、Windows環境に比べ動作安定度が非常に高く、「LogicProX」標準付属での音源、プラグインエフェクト、ループ素材でほぼ全ての音楽制作を完結できてしまいます。
(個人の必要性に応じ、各種サードパーティ製の音源/プラグインエフェクトの購入を否定するものではありません。
最初の導入時には「LogicPro」標準付属での音源、プラグインエフェクトにて必要十分な環境が揃うことに主眼を置いております)
また堅牢な自動保存機能により、フリーズ・シャットダウンによる不測な事態にも、最終作業に限りなく近い状態でプロジェクトファイルが保存されますので極めて安心です。そして、最もお勧めできるのことは耐久性堅牢性に優れている点です。ちなみに私の現役メイン機種は最新の2020M1 Macbook Airと、稼働8年目になる2013 MacProです。予備機の2012 Macbook Airも、前メインの2007 MacProもまだ現役稼働を続けられています。高品質な製造年/モデルを選べば非常に長く使うことが出来るのもMacの利点です。
Mac環境の安定性
Macでは、ほぼApple社製品のみにて環境構築を完遂できるため、極めて動作の安定性に優れます。一方Windowsでは、ハード/ソフトに何社もの製品を混合させねばならず、不安定化への要因がどうしても増えてしまいます。
基本的なMacの選び方
重視するポイントから説明します。
【重要】Appleシリコン搭載のMacコンピュータを選ぶ
(※Appleの意向により、Appleシリコン(新M1チップ)搭載Macへの切り替えを推奨する現在において、新品/中古市場にてIntel搭載Macを購入することはお勧めしません。また、保証の観点からも、新M1チップ搭載Macが市場に出てからまだ日が浅い現段階では、できるだけの新品購入を推奨します。
現在、Appleシリコン搭載機種は以下のとおりです
- iMac (24-inch, M1, 2021)
- MacBook Pro (13-inch, M1, 2020)
- MacBook Air (M1, 2020)
- Mac mini (M1, 2020)
これらの機種であれば問題ありません。
【旧IntelプロセッサMacについて】
2021年9月現在、AppleはIntelプロセッサ搭載のMacコンピュータも継続販売しています。しかしながら、今後のAppleシリコン搭載Macへの切り替え意向により、新品/中古でのIntelMac購入はお勧めできません。なお、M1チップの登場でIntelMacの中古市場は今までにない値崩れを起こしています。予算上どうしても中古IntelMacを狙う場合、「今」だけを切り取れば確かに魅力的と言えますが、Appleからの新OS発表によるマシンへの負荷増大、レガシーアーキテクトへの非対応な未来など考慮すると、積極的におすすめできる状況にないと判断いたします。
予算について
エントリースペック12.5万~ミドルスペック18.5万~29万
※DTMにての個人制作環境においてプロ仕様Mac(MacPro iMacPro)はオーバースペックです。
可搬性と性能
特にMacBook Air (M1, 2020)は十分な性能かつ高い耐久性と実用性を誇ります。比べてMacBook Proが壊れやすい傾向にあることは今までの経験則から否めません。ミニ鍵盤とヘッドフォンでどこでもDTM音楽制作が出来るMacBook Airは魅力に溢れています。自宅中心でしっかりと周辺環境を組み上げたい方は拡張性の高いデスクトップ型の選択が良いでしょう。
立ち位置的にMacBook Pro同等性能のMac miniのコストパフォーマンスはかなり魅力です。
そして、セットアップが容易、かつ拡張性を求める方はオールインワン型のiMacを選ばれるとよいでしょう。
完全なプロ仕様のiMac Pro/Mac ProはDTMにはオーバースペックと言えます。
よほど超高性能なCPUを必要とする動画/VR/ CG製作編集をハードにこなすのでなければ、iMac Pro/Mac Proは必要ないと言えます。
耐久性
圧倒的な耐久性を誇るのはMacBook AirとMac Proです。
この2機種は10年以上壊れずに稼働し続けることも十分に可能です。
特にモバイル用途がメインのMacBook Airの堅牢性は脅威とも言えるほどです。
*Macの型式/製造年数にて、同モデルでもかなり堅牢性には差が出ています。
Music Planzでは年式ごとの耐久性/堅牢性のデータを収集し会員向けに情報共有しております。
DTM/音楽制作に必要なMacのスペック
音楽制作は動画制作のレンダリングなどとは違い、瞬間最大的なCPU速度を必要とすることはあまりありません。
サードパーティ製音源やプラグインを過度に積み増さない限り、おおむね以下のスペックで十分にLogicProでの音楽制作/Mix/マスタリングまで対応できます。
CPUについて
MacのCPU性能比較
Webページ「Geekbench Browser」のMac Benchmarksにて過去の製品も含めたCPU の性能比較ができます。
- Googleで「Mac ベンチマーク」と検索
- Topの「Mac Benchmarks – Geekbench Browser」に入る
- 「Multi-Core」のタブをクリック
https://browser.geekbench.com/mac-benchmarks
- エントリーユーザー/初心者
- ミドルユーザー
- ヘビーユーザー
最低スコア1500以上
3000以上
4000以上にて十分
4500以上
5500以上にて十分
※新M1チップ=約7400
*LogicProのCPU高負荷音源/プラグインである、Alchemy、Sculpture、ChromaVerb、VintageEQを酷使しないのであれば、スコア1500程度でも十分に音源制作/Mix/Masteringが可能です。
メモリについて
【注意!】
現行機種の殆どはオンボードメモリにてメモリの増設が不可能になっています。現在増設が可能なのはMac Proのみです。
Macの現行機種は最低8GB〜となっていますが、16GB以上積むことを強くお勧めします。
M1Macは新しくユニファイドメモリアーキテクチャ(UMA)を採用しています。メモリアクセス、タスクのメモリ領域専有が以前と変わっており、単純に過去の16GBと比べることはできませんが、許容タスク量は確実に上がっています。特に、サウンドトラック目的など生楽器系アンサンブルを多量に使用される特殊用途ユーザ以外の方は、16GBユニファイドメモリにて十分です。
ストレージについて
【注意!】
現行ではMacPro以外の全ての機種にてはSSD等ストレージの交換が不可能になっています。
LogicProはインストールに非常に大きな容量を必要とします。
最低でも512GB以上のストレージを積む必要があります。また、ストレージ管理として、概ね200GB以上の空き領域を常に確保していることが望ましいです。その観点からもできれば1TBは欲しいところです。
拡張性について
もっともシンプルなMacBook Airでも、USB-C/Thunderbolt3の拡張ベイ/Dock等の使用により、十分な拡張性をもたせることが可能となっています。
しかしながら、外部拡張はCPUへの負荷を高める傾向がありますので、初めから外部拡張を考慮した環境構築ならばデスクトップ型を選ぶのがよいでしょう。
周辺機器
バックアップ用の外部ハードディスクは必須です。
おおむね2TB以上あればよいでしょう。
また セカンドディスプレイがあると非常に作業効率が上がります。
金言
予算いっぱいのハイエンド機種1台よりも、ミドル機種とセカンドMac(中古可)の2台持ちがオススメ!!!
音楽制作用途の他に仕事用途、Web用など、様々にMacを使いこなしてきた時、2台持ちの恩恵は計り知れません。
Macの機種について
大別すれば持ち運ばない「デスクトップ型」と、持ち運べる「ノートブック型」に別れます。
「MacBook~」のノートブック型を選択し、MIDIキーボードやオーディオインターフェイスなどを、モバイル用の小型なもので揃えれば、完全に持ち運び可能なDTM環境を構築できます。
すでにWindows環境が整っていて、できるだけキーボードやモニターを流用させたいのならば「Mac mini」の選択が良いでしょう。
しかしながら、やはりノートブック型の優れた可搬性という利点は計り知れないものがあります。
停電対応、修理での持ち込み、授業等への持ち込み等からできるだけノートブック型を選ばれることをお勧めします。
デスクトップ
MacPro(旧Intel) | 超ハイエンド機種。 音楽制作にはここまでのフルスペックは必要ない。 別途モニターが必要。 旧モデル(2013~19)は拡張性がやや低い。 |
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iMacPro(旧Intel) | ハイエンド機種。 音楽制作にはここまでのフルスペックは必要ない。 |
iMac(27inchは旧Intel 24inchはM1) | バランスの取れたオールインワン。 持ち運べないことを除けばCPが高くお勧め。 |
Mac mini(M1) | 必要十分なスペック。 すでにディスプレイやキーボードを持っている人/Windows ユーザー向け。 持ち運べないことを除けばCPが高くお勧め。 |
ノートブック
MacBookPro(旧Intel) | 機能的に申し分ない。 耐久性にやや疑問あり。 |
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MacBool Air(M1) | 持ち運びが極めて楽でいて、音楽制作には十分なスペック。特にM1MacbookAirはバランス的に最高の機種としてオススメ。耐久性も過去モデルからの参照では最も高い。 |
中古品の購入について
現時点においてはお勧めできません。
(前改訂時には中古品を勧めていました。状況により適時変化いたします)
DTM作業環境について
モニター
LogicProでは、作業画面の登録や、MacのMissionControlを駆使することで、小さな13inch画面でも効率的な操作が可能です。
しかしやはり大画面モニター、複数のモニター環境があると何かと便利です。
20inch~24inch程度の外部モニターは値段が手頃なので購入を積極的に検討しても良いと思います。
デスク
いわゆるDTM専用デスクなども楽器店などで売ってますが、普通のPCデスクで十分だと思います。
一番気にしたいのはMIDIキーボードの配置場所です。
デスク下部にスライドレールがあるタイプでMIDIキーボードがおけるものは相当に便利です。
また、左右どちらかに配置する場合は右手でマウスやトラックパッド操作を行うことから左に配置することをお薦めします。
周辺機器について
ヘッドフォンやMIDIキーボードの購入についてはインターネット通販の「サウンドハウス」をお薦めします。
詳細な機材選びは別回にて紹介します。
ヘッドフォン
「モニター用ヘッドフォン」の購入を勧めます。
SONYのMDR-CD900STが業界標準になっていますが、過去の施設での大量導入にてかなり壊れやすいことが発覚しています。
サウンドハウスのプライベートブランドである「Classic Pro CPH-7000」はコストパフォーマンスに非常に優れた製品で、しかも丈夫でお勧めです。
MIDIキーボード
鍵盤のタッチ感覚は打ち込み作業の速さに直結します。
M-Audio社の製品はタッチが柔らかく非常に速く打ち込めます。
鍵盤練習にも使うには49鍵以上がよいでしょう。
なお、DTM用途のMIDIキーボードは「消耗品」と割り切ってください。概ね2~4年程度で不具合の報告が多発します。これは中程度クオリティ以下の値段に関係なく起こります。
モニタースピーカー
YAMAHAのMSPシリーズやFOSTEXのPMシリーズなどが一般的な評価とCPが高いです。
特にややマイナーですがEDIFIERのED-R1100は非常に解像度が高く、かつ信じられないほどのCP性能を誇ります。
オーディオインターフェース・マイクについて
歌を録音する。
ギターを録音する。
インターネットで生放送する。
最高音質でのモニター環境を構築したいなど、目的によって選ぶ機種が様々になります。
Macは標準装備のオーディオアウトが高品質なので、もし、録音等を行う予定がないのでしたら必ずしもオーディオインターフェースは必要ありません。