EDMのジャンルの特徴、繰り返すジャンル統廃合の歴史 | 特定非営利活動法人ミュージックプランツ | 音楽制作・作曲・DTMを支援する会 Skip to content
エレクトロニックミュージックの歴史 一覧に戻る
2021年3月 27日

8:2006年以降・EDMの席巻


EDMの席巻とユーロビートのフラッシュバック

2005年頃より、テクノ、トランス、ハウス、そして発展系ヒップホップ、さらにダブステップと、それまでの微細化が進んだエレクトロニックミュージックが一気にEDMというシンボリックワードに飲み込まれはじめます。
そして加速度的広がりで2009年頃から全世界中に伝播します。
ここから約4年の間ピークを迎え、2013年末で「世界的には」EDMブームは終焉を迎えます。
2000年からここまでの流れは、テクノポップ元年の1978年から1986年のユーロビート勃興、そして1988年の終焉までとあまりにも似ています。
過去のユーロビートのバブル崩壊後にはデトロイト・テクノ、シカゴ・ハウスといった対極にあるようなジャンルが注目されました。
ですが、現在において、EDMほどの全体を飲み込むような大きなムーブメントはまだ起こってはいません。
しかし、サウンドの方向性として次に何が来るかは、この2000年以降のサウンドキャラクターの変遷を追えば、自ずと範囲が見えてくる可能性があります。

エレクトロニカ ≒ IDMからEDMへ

ミレニアム初頭から2005-6年頃の「エレクトロニカ」は、より「知性」を標榜した「IDM=Intelligent dance music」へと収斂されて行きました。
この流れがベクトル的にアンダーグラウンドへ向かうことにカウンターをあてるように、ライトユーザー向けのポピュラー音楽の代表格としてフランス出身のダフト・パンクを皮きりに、欧米から全世界へと拡散・拡大して行きました。

ボーカル処理の新技術:シェール効果が起爆剤

現在のDAWにほぼ標準搭載されている「ピッチ補正ソフト」の元祖「AutoTune」が1997年に発売されました。
それまで1990年初頭からオーディオファイル破壊編集にて局所的なピッチ修正を行うことはありましたが、ファイル非破壊にてプラグインエフェクトとしてピッチ補正が行える「AutoTune」の登場はボーカル処理に革命を起こし始めていました。
その中で、ピッチを意図的に強制補正させることで機械的なボイスサウンドが得られる事が発見され、シェールの「Believe」にて使われ、ヒットしたことからAutoTuneの名は音楽業界で一躍有名になりました。
またこのロボットボイスの様な独特のボーカルサウンドは「シェール効果」と名付けられ、そのサウンドは「ケロケロボイス」「ケロらせる」などと呼ばれます。
その後押しでダフト・パンクが2000年に「One More Time」にてシェール効果のボイスを前面に出した新しいエレクトロニックポップチューンで世界的なヒットとなると、その後のエレクトロニックミュージックのポピュラリティの獲得を背景にEDMムーブメントへと驀進していきます。

EDM系のサウンド技法:サイドチェインコンプ ~リズム同期のコンプ~

2000年初頭頃からダフト・パンクの「One more time」に代表されるように、ドラムのリズム隊サウンドが音圧のほとんどを占め、その他のパートはドラムの音量が鳴ってないところから湧き出てくるようなサウンドが流行りました。
この手法は「Side chain comp」と呼ばれます。
リズムトラックをコンプレッサーのSide Chainに入れて、コンプレスのトリガー信号にする技術です。

サイドチェインコンプ

2006~現在までのサウンドキャラクター

EDMサウンドを簡潔に表現するならば「超明瞭なHi-Fiサウンド」です。
1990年代からのローファイサウンドは、その後のエレクトロニカにも別な形で継承されていましたが、その対極を行くかのごとくにEDMサウンドはビート、グルーヴの輪郭がはっきりし、アタック感の強い物となっています。
サウンドテクニックはシンセサイザーの技法というよりも周辺エフェクトの応用技術がメインになっています。

音圧競争の時代

ミックス・マスタリングでの「音圧」アップにおけるサウンドの飽和感は通常の作り込みには得られないものです。
特に2005年ころにプロフェッショナルプラグインのスタンダード「WAVES」からマルチコンプレッサーの応用版であるマルチバンドリミッターのLシリーズ最終型「L3-16」が発売され、音圧飽和はピークを迎えます。
この2Mix-マスタリング工程でサウンドエネルギーが数倍にもなることは、逆に一つづつのパートサウンドの多様性を狭め、シンセサウンドとしては凡庸なものになることを助長していました。

シンセサウンドの特徴→空間処理

シンセサウンドでは、90年代程の目新しい技法はありません。
強いて言うならば、ミックスを最大限に活かすために、ステレオベースやMid-Side(MS信号)処理による空間処理が盛んに行われるようになりました。
その中で、シンセサウンドで特徴的なものはEDM-ダブステップで流行したワブルベース、グロウルベースでしょう。
ワブルベースはアナログシンセサイザーの重厚オシレーターデチューンから、グロウルベースは様々なアプローチがありますが、FM合成ベースプラス歪み系エフェクトから得られます。

これからのシンセサウンド

シンセサイザーが登場して約50年、アナログ方式から始まり、デジタル制御、サンプリング、FM、モデリングと様々な技術発達を経ましたが、根底から覆るような大きなエポックメイキング技術は生まれてきませんでした。
それはこれからも変わらないことが予想されます。
近年の空間技術の応用、多層エフェクトテクニックなどはこれからも予想されますが、EDMでの「ヤリ切った感」をみると、これからのサウンドキャラクターはシンセサウンドベースではなく音符を主体としたアンサンブルベースに移っていく可能性が高いのではないかと考察できます。
シンセ黎明期からテクノポップ元年、そしてユーロビートの大爆発後、EDMまでの再集結という歴史を見ると、音楽サウンドも衣替えをしながらその主体は輪廻していっていることがわかります。
となると、これまでのシンセ技法の振り返りだけで未来サウンドは全対応が出来ると言えそうです。
これまでのエレクトロニック・ミュージックの変遷を考察することが未来への一番の武器になることは間違いなさそうです。

エレクトロニック・ミュージック第8回目

名前 アーティスト アルバム ジャンル
Believe Cher Believe Pop 1998
One More Time ダフト・パンク Discovery Dance 2000
In My Arms Kylie Minogue X ポップ 2007
Right In Skrillex Bangarang [EP] Electronica 2012
Terror Squad Zomboy Reanimated EP Electronic 2013
Young & Dangerous (feat Kato)
[Party Thieves & Tre Sera Remix]
Zomboy Rott N’ Roll Pt. 1: Remixed Electronic 2017
Spectrum Zedd Feat. Matthew Koma WHAT’S UP DANCE THE GREATEST HITS II [Disc 2] Dance & House 2013
ゲット・ロウ Zedd & リアム・ペイン Stay + Dance 2017

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